老後資金2000万円の鍵は「安全な投資」。ブロックチェーンで投資リスクを徹底排除
人生100年時代、金融庁は老後資金に2000万円が必要だと述べたが、日本人は投資に消極的だ。少額投資のNISAもさほど普及していない。慎重な考えを持つ日本人にとって、不確定要素を持つ投資はリスクなのだ。
香港のQUANTECH社は、こうした投資のリスクを排除する取引システムを開発した。ブロックチェーン技術により、取引記録を残すことで詐欺や不正を防ぐ。個人投資家も安心して取引でき、投資活動の活発化が見込める。同社のジェネラルマネージャー・Alan li氏とIFA社の阿部氏が対談し、同システムの特徴やメリット、さらに金融都市・香港に世界の企業が集まる理由について語った。
金の取引とファンド投資の詐欺・不正を防止
Alan li:私はもともとフィンテック系のソフト開発をしていました。ブロックチェーンが注目されるようになってから会社の資金をブロックチェーンの研究に充て、今は香港と深センとマレーシアの3拠点でブロックチェーンの開発を行っています。
阿部:どんなプロジェクトに携わっているのですか。
Alan li:最近は香港の金銀取引組合の取引にブロックチェーン技術を導入しました。その組合が持っている金や銀の認証をブロックチェーン上にのせ、お客さんが金や銀の権利を買ったら、金銀取引組合が認可している貴金属店で金や銀を引き出せるようにしたのです。
阿部:それによってどんなメリットが生まれるのでしょうか。
Alan li:香港には投資用に金を購入する人が多くいましたが、店頭で金を購入して家に持って帰るとなると、途中で盗難されるリスクがあります。購入した金が偽物だったなど、詐欺被害にあう人もいました。これまでは金の所有権を紙で証明していましたが、これも非常にアナログな方法で紛失や詐称の可能性があります。ブロックチェーンであれば取引記録が残るので、本当に金庫に入っているか、金の残量はどれくらいかなど把握できるようになり安全性が高くなります。それが大きなメリットです。
阿部:金の取引管理は日本でも需要がありますね。だれも高価な金の延べ棒を家に置きたくないでしょう。所有権を得ても、実物は家に置かずに安全な場所に保管するのが一番確実な方法です。不動産業でも利用できそうな仕組みですね。
Alan li:ほかにも、中国の金融系のプラットフォームと共同で、ファンド会社のファンドマネージャーのマイデバイス管理プロジェクトを開発しています。ファンドマネージャーのトランザクションをブロックチェーン上に記録することで、不正や詐欺を防げます。もともと四半期に1回記録を残すなどの対策はとられていますが、その記録が合っているか把握できないこともあります。ブロックチェーンであれば全部の取引が記録されるため安全で、配当金の問題も解決できるでしょう。
阿部:確かに、従来のファンド投資だと本当に規約通りに投資されているか確認できませんね。
Alan li:「Appleの株を25%購入している」と書いてあっても、実際に株を保有しているかはわかりません。特に小さいファンド会社だと不正が起きやすい状態です。取引が発生した時にハッシュを生成してブロックチェーン上に記録を残せば、投資家自身が事実確認でき不正を防げます。
阿部:なるほど。たとえば、証券会社を API でつなぐのでしょうか?
Alan li:一緒にプロジェクトを進めている会社はファンド会社が提携している代理店で、その代理店を通して取引するとブロックチェーン上に記録を残せます。つまり、代理店を通して保証をつけるということです。その代理店以外からも購入できるのですが、ネット時代は信頼性が要なので、こうした保証がついている会社が投資家に選ばれるようになるでしょう。プロジェクトを通じて一般投資家の権利を守りたいですね。
阿部:日本でも同様のニーズがありますが、実際には銀行や証券会社など既存の金融機関が情報を提供しなければ実現せず、そこが導入時のネックになりそうです。日本は投資家を守るために金融庁がさまざまなルールを設けていますが、それだけでは守れません。実行するにはお金がかかるため、結果的に投資家が損をしています。本当は投資するべきお金をセキュリティに回しているんです。ブロックチェーンによって安全性が保たれれば、セキュリティコストを削減できて投資活動が活発化するでしょうね。
香港に世界中の企業が集まる理由
Alan li:香港のビジネスは自由度が高いのが特徴です。規制緩和や低い税率の導入により、世界的な金融都市に発展してきました。各国の企業を誘致するためにレギュレーションに幅を持たせ、資金が集まりやすい構造を作り上げています。
阿部:香港はお金がよく入ってくると聞きます。
Alan li:金融センターに香港以外のお金がたくさん入ってくるので、融資は受けやすいですね。ブロックチェーンのプロジェクトも融資の難易度は高くありません。いろいろな会社の支店もあり、ビジネス展開しやすい環境だと言えるでしょう。
阿部:貿易都市としての強みを発揮していますね。日本との接点はありますか?
Alan li:日本のゲーム会社に、海外顧客向けの支払いシステムを提供しています。日本は法律が厳しいので、あえて海外企業に依頼しているケースもあるのではないでしょうか。また、香港の税率が低いこともポイントでしょう。
阿部:企業にとって多くのメリットがありますね。最後に、ブロックチェーン業界に注目している人へメッセージをいただけますか?
Alan li:一刻も早くブロックチェーン業界に入ってきてください。これからは、どんな大企業も小さくなっていきます。なぜならネットの発展によってコミュニケーションが活発化し、個人で働くフリーランスが増え、新しい働き方が普及するからです。それに伴って社会のシステムも分散化するでしょう。私たちも3か国に拠点を分け、効率的に運営しています。ブロックチェーン業界であれば、こうした働き方も実現しやすいです。
阿部:日本は1拠点に集中しやすく、かえって会議が増えるなど成長が鈍化する傾向があります。分散して効率を上げるのはブロックチェーン的な働き方ですし、生産性が高いので世界的にもトレンドになりそうですね。貴重なお話をありがとうございました。
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ライター/萩原かおり 編集/YOSCA 撮影/倉持涼
Link: https://aire-voice.com/interview/5251/